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「俺的小説賞」に関すると思われる法律解説


第1回:民法第529条〜第532条「懸賞広告について」


○懸賞広告とは何か


 まず「懸賞広告とは何ぞや?」ということですが、これは民法の第529条から解釈することが出来ます。

 ――――――――――――――――――――
 民法 第529条
 ある行為をした者に一定の報酬を与える旨を広告した者

 (以下この款において「懸賞広告者」という。)は、
 その行為をした者に対して報酬を与える義務を負う。
 ――――――――――――――――――――

 この条文にあるように「ある行為をした者に一定の報酬を与える旨を広告」するのが懸賞広告です。
 つまり「犯人特定に繋がる有力な情報を提供した者には、300万円を与える」等がこれに当たりますし、「俺的小説賞」も広くはこの懸賞広告に含まれます。

 そして「俺的小説賞」は、懸賞広告のより小さな括りである、「優等懸賞広告」にも含まれます。
 何となく字面で解って頂けると思いますが、また別に条文がありますので、下で解説します。

 ※ところで、条文の後半にさらっと書いてありますが、懸賞広告者は「報酬を与える義務を負う」とあります。
 つまり俺が「賞金1万円!」というように「俺的小説賞」を宣伝している以上、賞金を出すことは義務なわけです。
 出さなかったら訴えることが出来ます。そして俺は負けます。
 そこら辺については別のお話なのですが、もしかするとそのうち書くかもしれません。


○優等懸賞広告について


 ――――――――――――――――――――
 民法 第532条 第1項
 広告に定めた行為をした者が数人ある場合において、
 その優等者のみに報酬を与えるべきときは、

 その広告は、応募の期間を定めたときに限り、その効力を有する。
 ――――――――――――――――――――

 こちらは民法第532条の第1項ですが、「優等者のみに報酬を与えるべきとき」とあります。
 少々迂遠ではありますが、これが「優等懸賞広告」の定義となります。
 つまり「ある一定の行為をした者の中から優等者を選んで、その者に一定の報酬を与える旨を広告」することです。
 応募作品の中から個人的に優秀だと思う作品を選び賞金を送る「俺的小説賞」は、まさしくこれです。
 他の公募や懸賞論文などもこれに当たります。

 ちなみに、条文の後半にある「その広告は、応募の期間を定めたときに限り、その効力を有する」というのは、読んだ通りです。
 「俺的小説賞」も、応募締切が決まっていなければ無効なわけですね。

 また、優等懸賞広告について規定する民法第532条には、続きがあります。

 ――――――――――――――――――――
 民法 第532条 第2項
 前項の場合において、応募者中いずれの者の行為が優等であるかは、
 広告中に定めた者が判定
し、
 広告中に判定する者を定めなかったときは懸賞広告者が判定する。

 第3項
 応募者は、前項の判定に対して異議を述べることが出来ない。

 第4項

 前条第2項の規定は、数人の行為が同等と判定された場合について準用する。
 ――――――――――――――――――――

 民法第532条の条文は以上ですが、正直それほど解説することはありません。
 読んだ通りに理解すれば、それで間違いはないかと思います。

 まず第2項に「応募者中いずれの者の行為が優等であるかは、広告中に定めた者が判断する」とありますが、「審査員は俺!」と宣伝していますので、判断するのは俺になります。


 そして、元々俺は「選考に対する異議は受け付けません」と宣言していますが、俺はこの第3項の「応募者は、前項の判定に対して異議を述べることが出来ない」という条文を根拠に、異議を却下することが出来るわけです。

  まあ「俺的小説賞」を作った時は、この条文知らなかったんですけどね……。

 そして、第4項に書かれていることですが、この条文だけでは解りません。
 下に記載しますが、簡単に言うと「前条第2項」には、「複数の人が報酬を貰う権利を得たら、早い者勝ちか、均等に分けるか、抽選で」というようなことが書いてあります。


 ※ところで、「優等」の判断はこちらで勝手に出来るというのは上記の通りですが、これを解釈すると「優等者無し」というのもアリだったりします。
 時々公募等で「大賞:該当者なし」というのがありますが、それもOKなわけです。
 ちなみに俺は「該当者なし、なんて逃げもしません!」とか書いて宣伝していますので、これは出来ません。
 それをやると契約違反です。
 やったら訴えることが出来ます。そして(ry


○懸賞広告の報酬を受ける権利について


 懸賞広告に関する民法の4つの条文のうち、2つは既に紹介しました。
 残る条文は、民法第530条と、第531条です。
 しかし、こと「俺的小説賞」では、この2つの条文はどちらもあまり意味を成しません。

 一応解説しますと、前者は懸賞広告の撤回方法について、後者は懸賞広告の報酬を受ける権利について定めています。
 懸賞広告の撤回方法はどうでもいいので、先に民法第531条の「懸賞広告の報酬を受ける権利」について解説します。

 ――――――――――――――――――――
 民法 第531条 第1項
 広告に定めた行為をした者が数人あるときは、
 最初にその行為をした者のみが報酬を受ける権利を有する。

 第2項
 数人が同時に前項の行為をした場合には、
 各自が等しい割合で報酬を受ける権利を有する。
 ただし、報酬がその性質上分割に適しないとき、又は
 広告において一人のみがこれを受けるものとしたときは、
 抽選でこれを受ける者を定める。

 第3項
 前二項の規定は、
 広告中にこれと異なる意思を表示したときは、適用しない。
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 読んで頂ければ解ったかもしれませんが、これは「俺的小説賞」には当てはまりません。
 これは、この民法第531条が、「一般的な懸賞広告」について規定しているものだからです。
 一般的な懸賞広告では、複数の人が報酬を受ける権利を手にする可能性が低くないので、このような規定があります。

 優等懸賞広告は、上で解説したように、優等者のみに報酬を与えるとしていますから、少し例外的になってきます。
 大体の賞であれば、何かしらの優劣を付けて優等者を決定しますから、複数の人が報酬を受ける権利を得ることは、あまりありません。
 だからこそ、民法第532条として別の条文があるわけで、基本的にはこちらが適用されます。


○懸賞広告の撤回


 懸賞広告の撤回についてです。
 もしも俺が、応募受け付けを始めた「俺的小説賞」を取り止めたい! と思ったらどうすれば良いか、という規定です。

 ――――――――――――――――――――
 民法 第530条 第1項
 前条の場合において、懸賞広告者は、
 その指定した行為を完了する者がない間は、
 前の広告と同一の方法によってその広告を撤回することが出来る。
 ただし、
 その広告中に撤回をしない旨を表示したときは、この限りではない。

 第2項
 前項本文に規定する方法によって撤回することが出来ない場合には、
 他の方法によって撤回をすることが出来る。
 この場合において、その撤回は、
 これを知った者に対してのみ、その効力を有する。

 第3項
 懸賞広告者がその指定した行為をする期間を定めたときは、
 その撤回をする権利を放棄したものと推定する。
 ――――――――――――――――――――

 まず第1項の「その指定した行為を完了する者がない間は〜その広告を撤回できる」というところに注目です。
 「その指定した行為を完了する者がない間」、つまり「俺的小説賞」では、「応募者がいない間」は撤回することが出来ます。

 そして、「前の広告と同一の方法によってその広告を撤回することが出来る。」とあります。
 これはつまり、「俺的小説賞」では主に「公式サイト・ツイッター・2ch」の3か所で宣伝してきましたので、撤回しようと思うなら、その3か所で「撤回します!」と意思表示をしなければいけません。
 ちなみに「広告中に撤回をしない旨を表示したときは、この限りではない」とありますが、要は「自分で撤回しないと書いたのだから、責任持てよ」ということです。


 そして第2項は、前の広告と同一の方法で撤回することが出来ない場合について規定しています。
 例えば、ツイッターのアカウントのパスワードを忘れたりして、ツイッターで呟けないという場合。
 この場合、残りの「公式サイト・2ch」や、他の手段で撤回の意思を表示することが出来ます。
 しかし、当然「ツイッターしか見てないから、撤回を知らなかった」という人が応募してくることも考えられます。
 そうなったときは、この応募を拒否することが出来ない、というのがこの条文の解釈です。

 そして、今までの仮定をぶち壊す第3項。
 「懸賞広告者がその指定した行為をする期間を定めたときは、その撤回をする権利を放棄したものと推定する。」
 これを「俺的小説賞」に適用すると、「応募の期間を定めているから、撤回をする権利を放棄していることにしとく」ということです。
 つまり俺は、一度募集を始めると「俺的小説賞」を取り止めることが出来ないんですね!


 ※ちなみに法律用語の問題となりますが、「推定する」とは 「反対の証拠が出ない限り、一応そうであるとする」ということです。
 つまりこの場合では、「途中で取り止めることがあるかもしれません」というような記載があれば、一応撤回は可能であることになります。
 混同される法律用語として「みなす」というものがありますが、また別のお話ですので、気が向いたらそのうち書くかもしれません。


○質問と回答


 Q.この法律ってどこまで秀たこの裁量で賞的に例外になるんだ? たとえば応募取り消しとか。

 A.懸賞広告は、法律上では契約という扱いになります。

 契約は一度成立すると、基本的に片方の意思だけで契約の内容を変更したり、取り消したりすることはできません。
 ですから応募の取り消しについても、「俺的小説賞」とはいえ、俺の裁量で勝手に応募を取り消すことは出来ません。多分。
 逆に取り消せる場合として、ぱっと思い浮かぶのは3つです。

 ・応募に不備があった場合
 応募に不備があった場合、そもそも契約が不成立なので、取り消せます。
 応募メールに必須事項が書いてないとか、実は結構あるので、皆さんもお気を付けて。

 ・募集要項とか契約上で、「こういう場合は取り消せる」と書いてある場合
 「俺的小説賞」でも注意事項に「既発表作品は作者本人からの応募だと確認が取れない限り選考から外す」というように書いていますが、そういった規定がある場合ですね。

 ・法律による場合
 例えば盗作は違法だから取り消せますし、未成年が応募してきたときは、その親が「こんな怪しい賞に応募するなんて認められない!」と言うのであれば取り消せます。

 ※ところで、懸賞広告も法律上は契約という扱いになる、と書きました。
 また、契約を片方の意思だけで勝手に変更したり取り消したりできない、というのも上記のとおりです。
 これは俺だけがそのように法律で縛られるわけではなく、応募者の方も同様に縛られます。
 ですから、契約の内容はちゃんと確認しましょう。
 契約をして不利益を被った場合でも、被害者に「契約の内容を確認していなかった」などの落ち度があれば、わりと法律は保護してくれません。
 要するに、賞に応募するのであれば募集要項はちゃんと読みましょう。もしかしたら応募費500円とか書いてあるかもしれませんよ。



 自己満足的な法律の解説は以上です。
 今回解説した内容は、基本的に俺の解釈です。
 大学での講義の内容などを踏まえてはいますが、俺というフィルターを通した結果、誤った解釈がある可能性もあります。
 何らかの役に立てよう、というときは、このページを鵜呑みにせず、自分で調べた方が無難であるということをお伝えします。

 【参考文献】
 『ポケット六法 平成24年版』 出版社:有斐閣 発行日:平成23年10月1日
  編集代表:江頭 憲治郎・小早 川光郎・西田 典之・高橋宏志・ 能美 善久

 『民法II 第3版 債権各論』 出版社:東京大学出版会 発行日:2013年2月8日
    著者:内田 貴



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